マルティナ・ポルトカレーロはペルー大統領候補としてもニュースを賑わすなど大変人気のある社会派女性歌手です。彼女はアヤクーチョ出身の先住民である母とメスティーソである父のもと1953年ペルー海岸部の都市ナスカで生まれ育っており、アンデス出身の歌手ではありませんが強い情熱を持って山岳音楽を学び、リマの国立音楽学校を経た後、歌手としてデビュー。“レタマの花”(アヤクーチョで1969年に発生したのペルー軍によるワンタでの農民と学生に対する大虐殺を題材にした有名曲)の歌い手としてペルー全土に知られる歌手となっています。
このアルバムは彼女が1987年リマ市民劇場で行なったライブ作品です。当時のペルーは経済が破綻しテロ集団が台頭、血生臭い事件が多発していました。数年前より自由な活動を求めヨーロッパへ移り住んでいた彼女は本国の民衆を憂い一時帰国を決意、このコンサートの開催に至りました。録音には当時、ペルーでは歌うことを禁じられていた“レタマの花”、“ママチャ・デ・ラス・メルセデス”をはじめ、アヤクーチョのワイニョ歌謡を中心とする13曲が彼女の存在感のある歌声で熱唱され聴衆から割れんばかりの拍手で称えられている模様が感動的に収められています。
今回のDOLLYレーベルからのリリースはカセットやCD-Rで繰り返しリリースされてきた音源をジャケットも改め、全曲歌詞付きでCD化したもので、当時のペルーを象徴する記念碑的な作品となっています。