先ごろのルパイ再結成に際し亡きマリオ・グティエレスの代役を務めたウィリー・クラウレ。その彼の2004年最新作は久々のクエッカを題材とした2枚組み作品。タイトルの“ALTERNATIVA”はこの言葉が本来持つ2つの意味合いをかけたダブル・ミーニングのコンセプトになっています。
まづは『もう一つの』という意味合いで1枚目は13曲の新作をウイリー自身の演奏で、2枚目で彼は伴奏に転じ1枚目から選択された7曲を今度はボリビアで活躍する7名のギタリストがそれぞれ独自の解釈で曲を演奏しています。曲を演奏するに当たり各ギタリストへは本来クエッカで2度繰り返されるメロディーのうちはじめ(プリメーラ)はウイリーの演奏に準じて、次(セグンダ)は自由な発想で演奏して欲しいという指示が出たそうで、セグンダに着目して耳を傾けていただければよりそれぞれのギタリストの個性の違いを楽しんでいただけます。
もう一つは『既存のものにとって代わるもの』の意味合いで“CUECAS”、“MAS CUECAS”の延長線上にあるナンバーもあれば“クエッカ”の概念を拡げる自由な発想から生まれたスタイルで表現された作品もあり、伝統的なクエッカを思い描く方は少々面食らうかもしれません。
競演する7名のギタリストはフォルクローレ畑からはマヌエル・モンロイ、セサル・フナロ、ファン・カルロス・コルデロらお馴染みの面々に加えエディ・ナビアの息子でスーカイのメンバーとしても名を連ねている若手ガブリエル・ナビア、フシオン系グループで広く活躍するビクトル・ウーゴ・メルカードが、ロック畑からはロドリゴ・ビジェガス、グレン・バルガスという今のボリビアのミュージック・シーンで活躍する蒼々たる顔ぶれ。1枚目でウイリー・クラウレならではの艶やかなギターの音色をじっくり味わい、2枚目ではそれを7人のギター職人がどう調理するかを聴き比べながら楽しめる、ギター好きには堪らない作品となっています。