LE CHANT DE LA TERRE ET DES ETOILES / LUZMILA CARPIO

そこに留まるのか、さらに先へと進むのか…。それはアーティストが自らの求めるものを極める上で選択せざるを得ない問題点です。
当作品はボリビアの誇る世界の歌姫、ルスミラ・カルピオがヨーロッパのミュージシャンとのコラボレーションで制作したものです。使用されているのは殆ど西洋音楽系のアコースティック楽器でギターやコントラ・バス、様々なパーカッションに加え“オクトバス・フルート”、“クリスタル・オルガン”といった普段なかなか耳に出来ない楽器も登場し耳を楽しませてくれます。各楽器が曲ごとにそれぞれ自然の、そして宇宙の営みの一部を担当する（例えばクリスタル・オルガンが太陽光線を、バス・フルートが空気をあらわすといった感じ）といった実験的な試みによるインプロビゼーションが繰り広げられておりそれら“配役”を照らし合わせながら鑑賞するのも楽しいものです。全体的には前作でみせた普遍的な現代性を更に突き詰めた音作りになっており、単なる一地方の（エスニック）音楽を越えたアース・ミュージックと呼ぶに相応しいスケールの大きい作品に仕上がっています。
70年代にヨーロッパに渡って以来、常に外から自国ボリビアの文化を見つめ、また、様々なアーティストとの交流を通して見識を広めた彼女だからこそ見えてきた、恐らくこれまでアンデスのアーティストの誰をも到達し得なかった先の世界へと彼女は踏み出したといえるでしょう。